The Huffington Post Japanの記事より。
 
オーストラリア国立大学の戦略研究の教授ヒュー・ホワイト氏の執筆です。
BA(学士)(メルボルン)、BPhil(オクソン)戦略研究の教授、国際、政治&戦略研究科
アジア太平洋地域のANUカレッジ

【転載開始】

★【南シナ海問題】アメリカは中国に譲歩すべきだ さもなくば高い代償を払うことに

アメリカ海軍の南シナ海での「航行の自由作戦」には2通りの見方がある。
一つは、国際的な海事法の難解な争点のなかでアメリカの立場を主張するための、
抑制的で法に則った展開と見ることだ。
もしくは、今週行われた作戦を、
アジアでの新たな覇権争いの中での大きな戦略的動きととることだ。

後者の見方をすれば、中国がますます大胆で率直な動きを見せているのに対して、
アメリカの西太平洋での海軍力の優位性を再度見せつける意図があったということだ。
そして、中国がアメリカに取って代わりアジアで自国中心の新たな戦略体制を築こうと
動きを見せるのに対して、今までどおりのアメリカ主導の地域秩序を守ろうとしているのだ。

アメリカは、法の範囲内での通常の作戦行動と、戦略的決意の率直な表明という両面を、
世界が見てくれることを望んでいる。
しかし、それは失望に変わりそうだ。
今週起きたことは、アジアの課題をアメリカがいかに間違って解釈しているかを
単に強調したに過ぎないかもしれないのだ。

■アメリカは、南シナ海を航行する一般的な権利を守っているわけではない。
  なぜなら、中国が島々を占拠してその周辺で行なっていることは、
一般的な権利を犯しているとは解釈されないからだ。

まずは法的側面を見てみよう。アメリカは明らかにこの観点から作戦を行い、
自らの海事法の解釈をいつものように主張している。
しかし、この作戦がどのような法的立場を主張するものかは正確には述べていない。

ひとつ確かなことがある。
アメリカは、南シナ海を航行する一般的な権利を守っているわけではない。
なぜなら、中国が島々を占拠してその周辺で行なっていることは、
一般的な権利を犯しているとは解釈されないからだ。
アメリカはこれとは反対のことを曖昧な言葉で何度となく主張しているが、
それは明らかに誤解を招いている。

アメリカが追求している法的なポイントの可能性は三つある。
一つは、世界で広く認められた領海での「無害通航」の権利である。
これはアメリカが主張し、中国はもしかしたら異を唱えるかもしれない。
もう一つは、満潮時には沈んでしまう地物(岩礁や島を含め地上にある全ての物)に基づいて
12カイリの領海域を主張することの正当性である。
これはアメリカが否定し、中国が主張しようとしているものだろう。
三つ目は、地物そのもの、またその周辺の領海についての中国の主張に対して、
アメリカが異議を唱えるかもしれないということだ。

■中国が、例えばスプラトリー(南沙)諸島周辺の軍事力や体制を強化するなど
実質的な行動に出た場合は、アメリカは実に難しい選択を迫られることになる。

今週の作戦行動に関するこれらの可能性のうち、最も理論的な解釈は2番目のものだ。
国務省の報道官は、作戦は国際的な海域での航行であると述べており、
これによって最初の可能性は否定される。
また3番目は、アメリカが南シナ海で多くの国が争っている権利について
長い間意見を表明してこなかったことについて、変えたことを意味する。

しかし、現実にはこのような点は重要ではない。
なぜならアメリカの主張いかんに関わらず、法的問題は作戦行動の口実であり、
真の目的が戦略的なものであることは完全に明白だからだ。
オバマ政権は「航行の自由作戦」の法的な面を利用して、
アジアの将来の主導権をめぐってエスカレートしている中国との覇権争いで、
自らの決意を示そうとしているのだ。

その戦略がうまくいくかどうかは、中国の反応次第だ。強引なふるまいを控え、
島で基地の建設をやめ、アジアにおけるアメリカの優位性の黙認に戻るのなら、
明確な成功といえるだろう。しかし、その可能性は限りなく小さい。

■アメリカは、最初の小さなサインを見せただけで中国が引いてくれることを
いまだに期待している。
オバマがアジアの秩序を維持しようとしているのと同じように、
習近平(国家主席)がそれを変えようと決意しており、
自分の方が有利な立場にあると信じている可能性について理解していないのだ。

中国は、アメリカの航行を無視するか、もしくは報復手段に出る可能性の方が高い。
もし中国が怒りを表明し、これまでと同じようなことを継続すれば、
アメリカの行動は弱くて効果がないように見えてしまう。
中国が、例えばスプラトリー(南沙)諸島周辺の軍事力や体制を強化するなど
実質的な行動に出た場合は、アメリカは実に難しい選択を迫られることになる。

中国の行動がエスカレートするのに対して、オバマ政権がおとなしく引いてしまえば、
今よりも弱腰と見られ、自国だけでなく、アジアや世界での信頼性に大きな傷が付くだろう。
しかし強固な対応をすれば、中国のさらなる報復行動に出る可能性が高まり、
あからさまな対立に向かうことになりかねない。
そうなれば経済的な費用がかさみ、アメリカが容易に勝利する可能性はかなり低くなる。
この選択は、アメリカ大統領にとって非常に重い。

このような立場に自らを置くことがどうして賢いと言えるのか、理解するのは難しい。
「航行の自由作戦」のような低リスクで低コストの法に則った通常行動は、
高リスクで見返りも大きい戦略的な争いの中で決定的な動きとなりうると、
政権は考えているようだ。
これは、アメリカが依然として中国との争いの性質を理解していないことの表れだ。

■したがって、アメリカは今回の行動がコストをかけずにできるかのように
装うのをやめるべきである。

現在の中国は、非常に強力で野心を持った国だ。
そして、それを率いる男はアジアでの大国関係の新しいモデルを築き、
アメリカの覇権に基づいた地域秩序に取って代わろうという強い決意を持っている。
これに対して、低リスクかつ低コストで対処する方法はない。
今週の作戦のように、アメリカがそのようなやり方をとろうとするほど、
アジアでの強い立場を維持するために必要な強硬手段をとるという決意に欠けている、
ということがますます明らかになるだけだ。

アメリカは、大きなコストとリスクをとる確固たる覚悟があってこそ初めて、
アジアでの中国の増大する力を抑えることができる。
自らも相応のコストとリスクを負うことでしかそれは成し遂げられないだろう。
したがって、アメリカは今回の行動がコストをかけずにできるかのように装うのを
やめるべきである。

さらに、アジアでどのような役割が本当に必要なのか、
その役割のためにどのような代償を払う用意があるのかを考える必要がある。
中国の力に対して従来のような優位性を保つには、
その価値以上の代償を支払わなくてはならない可能性が高い。
そうならば、長期的に支払う意思のあるコストに対して得られる最重要の利益を
確保するような新たな役割を考案し、議論する必要があるだろう。
そしてそれは、中国の野心をある程度は許容することを意味するのだ。

【転載終了】

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アメリカの対応は、ちょうど財政赤字上限引き上げのタイミングであり、
危機を装った可能性もあり得ます。

それを見越して、中国は過激な反応を見せない可能性もありますが、
北京で指導者が一堂に会して経済政策を議論する、
党中央委員会第5回全体会議(五中全会)が開催中ということもあるかもしれません。

両大国のお国事情を理解できていない、
日本の政権党の空騒ぎが世界のお笑いになってしまうかも?
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